基底を替えると座標の数値は変わりますが、表しているベクトルそのものは変わりません。
空間のすべてのベクトルを個別に記録することはできません。しかし、少数の基本ベクトルを選び、各ベクトルをその線形結合として表せれば、係数だけで空間全体を扱えます。その基本ベクトルが多すぎると表し方が重複するため、必要十分な本数へ絞ります。
第1条件は「材料が足りる」、第2条件は「材料に無駄がない」という意味です。両方が必要です。
生成するので少なくとも一つの表し方があります。二つの表し方があれば、差を取ると基底ベクトルの線形結合が零ベクトルになります。一次独立なので係数の差はすべて0となり、二つの表し方は同じです。
R2 は基底が2本なので dimR2=2、R3 は3本なので dimR3=3 です。基底そのものは多数ありますが、本数は変わりません。
零ベクトルだけからなる空間 {0} の基底は、ベクトルを一つも含まない空集合です。したがって
dim{0}=0
と定めます。{0} の基底に零ベクトルを入れないのは、零ベクトル1本の集合が一次従属だからです。
同様に、次数が高々 n の実係数多項式全体
Pn={a0+a1x+⋯+anxn∣a0,…,an∈R}
では 1,x,…,xn が基底です。したがって dimPn=n+1 です。「最高次数が n だから次元も n」ではなく、定数項を含む n+1 個の係数が必要です。
Q別の基底で座標を求める★☆☆
b1=(1,1)T、b2=(1,−1)T をこの順に並べた基底について、x=(4,2)T の座標を求めてください。
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x=ab1+bb2 と置き、a+b=4、a−b=2 を解きます。
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2式を足すと 2a=6 なので a=3、そこから b=1 です。したがって
x=3b1+b2であり、この順序の基底に関する座標は (3,1)T です。
Q平面の基底と次元★★☆
W={(x,y,z)T∈R3∣x+y+z=0}の基底を一つ求め、dimW を答えてください。
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x=−y−z として y=s,z=t と置き、一般のベクトルを s,t の線形結合に分けます。
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xyz=−s−tst=s−110+t−101.したがって2本は W を生成します。また
a−110+b−101=0の第2・第3成分から a=b=0 なので一次独立です。よってこの2本は基底で、dimW=2 です。
Q多項式を別の基底で表す★★★
P2 の順序付き基底
B=(1+x, x+x2, 1+x2)に関する p(x)=2+3x+x2 の座標を求めてください。
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a(1+x)+b(x+x2)+c(1+x2)=p(x) と置き、定数項・一次項・二次項を比較します。
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係数比較から a+c=2、a+b=3、b+c=1 です。これを解くと a=2,b=1,c=0 となります。したがって
[p]B=210.
発展的には、一次独立な集合を基底まで増やせる「基底の延長」に関する定理があります。ここでは基底の定義と座標表示を優先します。